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手動インターネットで東京へ情報発信!

 

 アスキーでの話はコアラに次の発展をもたらすものだった。アスキーネットとコアラを結ぶ、つまりネットとネットを結ぶインターネットをやってみよう、というおもしろい提案であった。インターネットは今でこそ研究者間のネットワークとして大発展を遂げているが、当時のパソコンをホストにした我々のシステムではまったく対応できず、手動でホスト間のデータ交換を行うという原始的な方法であった。やり方はそれぞれのネットの中に、「アスキーからコアラへ」「コアラからアスキーへ」という二つのコーナーを用意し、たとえば、コアラメンバーは「アスキーからコアラへ」のコーナーでは読むだけ、「コアラからアスキーへ」のコーナーにはアスキーメンバーに読んでもらいたいものを書き込むだけ、といった使い方であって、そのデータ移動を東京にいる藤野君が行った。東京・大分間の通信費がアスキー事務局もコアラ事務局もバカにならない金額だったが、ナント、藤野特派員が自腹をきっての対応になってしまったのは申しわけない。

 四月一日にスタートしたのだが、名古屋のレジャーマップもコアラと同時に始め、東京に地方の声を直に届けるすばらしいチャンスとなった。とくにに全国からアスキーに集まってくるパソコン操作を得意とする人達にとっては、コアラの一般人主体、地域おこし的発想の通信内容には驚いたようで、さまざまな感想が返ってきた。藤野君の手厚いフォローがあるのも幸いして「完全な漢字通信に脱帽しました」「大分は進んでいますね。パソコン通信を地域おこしにするんですね、我が地域にも」といったアスキーからの反応に、大分在住のコアラ会員はうれしくてしょうがない。アスキーからの転送ものは漢字でなくカタカナ文が多くって読みにくいものの、これが中央で認められることだなと、なんとなくわかりかけてきた。地方が誉められたり、注目されるのは気持ちがいいものだ。デモアクセスが増えてきて、北海道から沖縄まで思いがけない地域からアクセスしてくる。県外の入会者が多くなってきたのもこの頃からだ。外から見られるって、うれしいな。間違いなく情報発信しているという感じだ。そういったことが重なっていけば、それだけ東京で訴えるチャンスが増えてくる。会津さんから連絡があって、四月二十三、二十四日にネットワーキングデザイン研究所設立記念セミナーを開くから、そこでコアラの話をしてほしいと依頼があった。OKはしたもののよくよく聞いてみると、他の講師の人達はそれなりに売れた面々ばかり。そのうえ聞いてくれる人達は、大学の先生やメーカー、企業の第一線で「パソコン通信」に取り組もうとする人達で、私の話が通用するのか?心配になってきた。

 とはいうものの、矢は放たれ、会津さんや中村さんに、コアラのどういったところが興味を持つかを聞きながら準備を進め、発足の経緯、コアラの特徴、データベースからコミュニケーションへ変遷したことなど具体的な事例を中心に話した。ネットワークの実例として紹介されたのが、アメリカのメタネットとコアラだけで、いわば日本の代表例という格好になって、参加者はおおいに興味を示してくれたし、それなりの評価をもらったようだった。そして、多くの人達とも知り合うことができた。『ホロニックカンパニー』の著者、北矢行男さんの話はパソコン通信の交流が既存組織をホロニックに変えていくことを理路整然とわからせてくれたし、メタネットの代表者であるフランク・バーンズの話は、COARAー2を構築しようとする私にはおおいに参考になった。

 しかし、一番のショックは、増田米二氏であった。彼は一九〇九年生まれ。『原典 情報社会』を著しているが、その本はまず『The Infomation Society as Post-Indutrial Society』という名前で一九八〇年にアメリカで英語版を出版、ベストセラーになった。その後、スウェーデン語、スペイン語、ポルトガル語、韓国語、ハンガリー語と翻訳され、昨年末やっと日本語版として出版された、という紹介を聞いて思わずびっくりしてしまった。あとでわかったことであるが、平松知事は通産省にいた頃、増田さんは労働省の課長であって、互いに省をまたがる勉強会を行おうと五人委員会なるものをつくっていたとのこと。また、平松知事はコンピュータについて増田さんから多くを教えてもらったようだった。これも何かの縁かも知れない。

 その増田さんの話は少々わかりにくかったが、『原典 情報社会』をめくればめくるほど、地域おこし的、または、市民運動的なスタンスを持つコアラはたいへん勇気づけられ、今後の活動の大指針となり、より強いコンセプトをもたらしてくれた。パソコン通信をしたこともないだろう増田さんであるのに、「彼は(パソコン通信を)わかっている!」と叫びたくなってくる。

 



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