post86:平松知事の登場とコアラ東京特派員の誕生
平松知事の登場とコアラ東京特派員の誕生
その六百万円で実際にどうシステム構築ができるか?どうやって民間負担をまかなうか?ということになるが、この地域INS推進事業の将来ビジョンを練ったり議論したりしていた十二月中旬から一月にかけて、後藤カイチョーの仕掛はもっとダイナミックな結果を産み出してきた。
平松知事が実際にコアラに登場し始めたのである。
年末になって、喫茶のマスターである藤野君が突然、東京転勤が決まってしまい、藤野君の大活躍に頼っていた関係者一同は、どうしたものかと思案してしまっていた。私などは彼の会社の梅林社長に「しばらく転勤を猶予してもらえませんか?」と頼みにいこうか、と、思ったほどだ。
結局、本人の「皆さん、東京にコアラの支店ができたと思ってください、これまでのように一日数回アクセスは不可能かもしれませんが、〟コアラ東京特派員〟として、あちらの情報をできるかぎり送るつもりです。この高度情報通信革命のさ中にデータのたまり場である日本の首都にいることは望外の幸せかもしれません」という書き込みで、彼は、〝喫茶のマスター〟をつくり出したのと同様に〝コアラ東京特派員〟なる新しい役職を作り、かつ、就任してしまった。これは今も続く重要な役職である。何しろ地方ネットワーク・シティが首都に送った全権委任大使なんてそうあるものではない。
一月五日に、喫茶コアラのモデルで実際の喫茶店ライトハウスで行われた彼の送別会は、東京からの電話代が高く、毎日の通信が本当に不可能になるであろうことを皆知っており、彼をオンライン上で失う寂しさが何となくにじみ出ている会合であった。
藤野君のことだけでなく、ホストに使っているPC9801というパソコンのクセを知らぬがために、正月の一月一日深夜に年賀電子メールのほとんどを消してしまうという大失敗もあって、やや落ち込んでいた。
原因は簡単で、ホストパソコンの電子メール領域の節約のために、毎日早朝四時に自動的にプログラムを動かして、三ヶ月以上たった古いメールは消してしまうようにしていたのだが、PC9801の内臓タイマーは月日の自動更新を行っても年の更新は行わない。手動更新するようになっている。つまり、一九八五年十二月三十一日二十三時五十九分五十九秒の一秒後は、本来なら一九八六年一月一日○時○○分○○秒になるはずが、一九八五年一月一日○時○○分○○秒という一年前の年月日になったわけで、動き出したメール消去プログラムは、○時以降に書かれた電子メールを三カ月以上前のものと判断して消してしまったのである。
事務局としては皆さんに平謝り。何しろ、パソコン通信ではじめて年賀電子メールを経験しようと皆さん頑張ったのが、水の泡、電子の泡となって消えてしまったのだから。通信事業者の絶対に間違いがあってはならないという、安全確実な通信確保の重要性を改めて認識してしまったものの、意気消沈。皆がコアラをおもしろくないと、思わなければいいが、と心配な気持ちでいっぱい。
と、正月早々は何となく気が晴れない状態だったのだが、正月休みが終って、県庁秘書課の奥塚さんから電話があり、知事のところからほぼ通信ができるようになったから顔を出してくれという。で、出かけていって相談するうちに、知事がコアラメンバーに電子メールで新春の挨拶を出したい、ということになった。
決ったら、速い。
電子メール(画面2─3)が、全会員(といってもまだ百人未満)に送られてきた。
明けましておめでとう。
COARAがスタートしてはや半年以上立ちました。 昨年が通信元年とするならば、今年は通信実用の年です。県が推進するニューメディアコミュニティー構想、テレトピア構想、メディアターミナル構想等の地域INSもいよいよ実現の年であります。
あなたたちの活動はこれらの構想のよき理解者として構想実現の強力な推進材となるものであり、また実現後の有力な利用者であると思っております。
今年もなお一層の研究活動を続けられ、ニューメディアを身近なものとし、一村一品・大分流の情報活用の基礎作りをお願いするところであります。
1986年 1月 大分県知事 平 松 守 彦 (特別名誉会員、 A333100)
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画面2─3 平松知事の新春のあいさつ |
受け取った会員達は、驚いたり喜んだり。噂では、知事がコアラの名誉会員になってくれる、とは聞いていたけれど、いきなりの電子メールでのご挨拶。掲示板ではなくて、一人一人に個別に送る電子メールで我々にあいさつをくれた!上から見てるだけじゃなく、同じネットワーカーだったんだ!で、恐れを知らぬ勇気ある会員達は、さっそく返事を書きはじめた。(画面2─4)
拝啓、先般は電子メールによる御激励をいただき、まことにありがとうございました。会員一同、勇気100倍の思いで、今後も頑張ろうと決意を新たにしております。
さて、昨年の県の地域ソフト活性化事業では、当町を指定していただき、ありがとうございました。 当町はOA研究会を中心に、パソコンを使った自治体業務用のオリジナルソフトの開発(水道会計、収納消込、起債管理等)、パソコン通信によるオンライン広報(アスキーが日本で最初だろうと言ってくれました)、また1月より町民向けの研修会開催(地域ソフト活性化事業)などの取り組みをしてまいりました。
「中央の情報を即時にキャッチし、また地方が情報の発信源となる」とは、豊の国づくり塾の中で、いつも聞かされている言葉ですが、今後ともこれを合言葉に、地域社会のために微力を尽くす覚悟です。よりいっそうの御支援をお願い致します。
知事さんの御健康と御発展をお祈りして、筆(キーボード)を置きます。
三重町OA研究会 会長 江藤喜啓(企画課)
豊の国づくり三重塾 塾生 三重に元気を出そう会 世話人 森迫信夫(総務課) 佐藤文紀(企画課・広報担当) |
画面2─4 会員からの平松知事への返事 |
といった具合に、次から次へと会員が返事を寄越したので、改めて知事もこのパソコン通信という新メディアの双方向通信機能に驚いたに違いない。後藤カイチョーにお供して知事に「名誉会員になっていただいたこと、さらには電子メールをいただいたこと」のお礼に出かけ、そこでもう一度アクセスしたところ、知事あてに二通もメールがきてる。一つは高校生の馬場雅治君からで「情報処理技術者の試験を大分で簡単に受けられるようにして!」という電子メールに、「あれ、これはソフトパークでできるようになったはずだがな」とつぶやきながら「おい、奥塚君、調べて返事をしよう」なんていっている。しかも、動作と動作の合間に「これはおもしろい!これはおもしろい!」とうなずいている。知事が楽しんでいる姿こそ、我々ネットワーカーにはとっても愉快。次に秘書課に行ったら、今までキャプテンを置いてあった場所にコアラ用の通信装置一式が座っている。知事室隣りの来客が待っている部屋への設置で、目立つ場所であった。知事の指示で置き換えたという。なるほど、後藤カイチョーの読みは深いなかつ、知事も気楽に楽しんでるな。
そういった知事と会員との直接的電子メールのやりとりがいつしか話題を呼んで、「パソコン通信目安箱」と呼ばれるようになった。

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