post81:従来型データベース方式の狭間で
従来型データベース方式の狭間で
双方向通信システムの持つ本質的機能を、突然のごとくそういった形態で発見し(?)考え直している一方、情報センターで従来型データベースへの再検討が並行して行われていたが、そのギャップが大きかった。
情報センターは、ハードディスクを特別に購入貸与してくれたほどコアラの動きや小さな実績を大事に考えてくれている。その結果、本来の目的であるコロンブスシステムへ双方向機能が加えられないかどうかを検討する専門委員会を九月からスタートさせていたのである。委員会は情報化促進研究会と呼ばれ、副題が「中小企業のためのコミュニケーション(情報交換)・システム実用化への研究開発」であった。いま思えば、自治体のデータベースに公式の電子メールや電子掲示板をつけるかどうかの、これまた日本で初の検討会であったわけだ。当時、パソコン通信のことを「オンライン・データーベース」と一般的に呼んでいたこともあって、まさに私は「大分のデータベースがオンラインデータベースに変身する」という期待感いっぱいであった。
委員会メンバーは、親委員会と実作業を行う研究委員会の二部構成で、日本文理大学の木本茂夫助教授を委員長に、NTT大分支社、富士通、地元ソフトハウス技術者、地元大手スーパーであるトキハインダストリーの情報セクション担当者などで構成。私は、コアラというより、大分経済同友会のニューメディア委員会副委員長という、中小企業ユーザーの立場での参加である。
一ヶ月に二回開催というハイピッチで検討が行われ、時おり、京都から日本工業新聞社大阪支社経済部の関博孝記者が親委員会に委員として出席していたが、いま思い起すと、彼と交わした話がまさに、「一九八五年は通信自由化・情報元年」であったことを示す内容だった。
大分出身の関さんは、委員会が始まってまもなく日本工業新聞社を退社し、京都で銀行などをスポンサーにニューメディアのサービス会社である日本テレネット(株)を設立し、そこの専務取締役に転身してしまった。その会社は THE LINKS(ザ・リンクス)というMSXパソコン専用のネットワークを構築しようというもので、いうなればキャプテンとパソコン通信の中間的サービスであった。つまりはニューメディアの中にビジネスチャンスを見出した、ということだろう。
委員会での議論は、そういった関さんとの意見交換があったりして、なかなか活発で、結論として〝コロンブス・システムに電子メールや電子掲示板を作ってしまおう〟という方向性を強めてもらったようだ。しかし、その実現の可能性は、東京の中小企業事業団本部とホスト機のメーカーである富士通の考え方に大きく左右されてしまう。
富士通からは、〟TSS(タイム・シェアリング・システム)〟に詳しい利用者がパスワードを認知して他のファイルを破壊しはしないか〟〟情報センターが公開しないファイルまで一般利用者からのぞかれてしまう〟〟プログラムに詳しいものが利用すればCPUループなどで本来の仕事を妨げる〟ようなこともありますよ、と警告的アドバイスがあったり、また〟モデル端末には富士通のFM16シリーズを提案します〟などと親切な話しがあったりもした。
しかし、根本的に困ったのは、事業団が考える〝ネットワーク運営に対する考え方〟そのものであった。たとえば、利用者は「県内で中小企業の経営支援的立場の人に限る」という制限つきであった。噛み砕いていえば、県庁中小企業担当職員や商工会議所・商工会の経営指導員の利用はOKだが、中小企業者達の直接的利用は歓迎しない、ということを意味する。これじゃいくら電子メールシステムができたって、我々は困ってしまう。そういったことなども含めて、そもそもコアラを発足させる目的の一つである「実験システムで実績を踏まえて地方から東京への提案」という考え方などを情報センター職員を通じて説き続けるが、難しい、固い、まったく返事が前に向かない。
従来からの指摘点である、「通信プロトコルが半二重であっては我々が参考にしたい世の中とズレ始めてる」ことも、「本格的利用には二十四時間運転が必要なこと」も、「東京から規定された画一的なものだけでなく、地域独自のデータベース構成を作りたいこと」も、東京からはよい返事が返ってこない。
事業団本部をサポートするメーカーの立場も同様で、「大分で素人が何をいってるんだ」というのが見え見えであって、彼らと私との間に挟まれてしまった情報センターの担当者は本当に困っただろうなぁ。一度は、東京から私にかかってきた電話で「あなた達は、遊びでやってるんでしょう。我々は仕事でやっているんだ。だから任せておきなさい」とはっきりいわれた。大分の異業種交流グループやコアラメンバーなどにアンケートを採り、我々のいっていることの必要性を東京へ訴えるが、残念ながら話にならない。
大型機を扱っている人達にとってパソコン通信というのはあまりに達成感がある、認め難いオモチャの通信であったようだ。
しかし、大分には現実にコアラというにぎやかな実績が、小さいながらも目の前にあることでもあって、情報センターは、東京に頼らず、大分独自でそれら電子メール、電子掲示板のシステム開発を決意してくれた。しかし、大分の富士通のシステム開発部隊である大分富士通ソフトウェアラボラトリ(OSL)の考える仕様は、一生懸命であっても、東京の考え方を反映して自然と自粛気味のものになってしまう。
ホスト機はMー320Eであるが、これはオンライン・ネットワーク用のホストとして設計されてないこともあり、日々改善され続ける現状のCOARAー1パソコンホストシステムのほうがすでに使い勝手がいいように思え始めてしまった。
現に、コアラ内で、コミュニケーションがデータベースの表(おもて)にならなければいけないといった、コミュニケーション最優に傾くにつれ、
それらを補足する機能である利用者個人ごとの未読管理機能、利用者の住所や職業などのプロファイルを参照する機能など、次から次へと発想される新しい機能の追加が本委員会・富士通の設計仕様では追いつかない。
で、私自身はだんだんと、現状コロンブスシステムをベースにした本格的なパソコン通信システム構築は不可能である、と結論づけざるを得なくなってしまった。
これではコアラ発足時の本来の目的からずれないか? 悩んでしまう。

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