post75:日本やろ、日本語を使えんといかん
日本やろ、日本語を使えんといかん
当時、パソコン通信専用の手ごろな端末用ソフトは売られておらず、また、パソコンのワープロソフトでつくった文章は、まだパソコン通信を意識しておらず、パソコン通信用の送信データに変換することができないものばかりだった。今でこそ「一太郎」が持てはやされているが、一太郎の前身の「JWORD」や「松」というワープロソフトでは、通信用の使い勝手を一般のフツー人に説明できない。たとえば、パソコンで取り扱う漢字コードがパソコン間で不統一だし、同じパソコンであってもソフト間で不統一であったりと、パソコン通信でどの漢字コードを使うか、その漢字コードで書かれた文字データだけをどのようにワープロから取り出すかを説明すること自体が混乱を与えてしまう。
「ワープロでゆっくりとつくった文章を、コアラのホストコンピュータに自分の都合のよい時に送信してください。その送信する文章データはテキストデータと言いますが、コアラの場合、シフトJIS漢字データで作られたものがよいですね」
などということを説明すると、
「ワープロ専用機とワープロソフトはどう違うのかい?」
「自分の都合のよい時たって、ゆっくり文章つくったら電話代がいくらあっても足らないやないか」
「テキストデータって何?」
「パソコンの中に入っているデータそのままではだめなんかい?」
「シフトJISって?」
といった具合に際限なく質問が返ってくる。これはPC9801のMSDOSで動く一太郎や、ワープロ機能の付いた通信ソフトが発売されるまで言われ続ける。
つまり、アルファベットしか扱わないアメリカでは考えられない障害が日本にあったわけだ。漢字問題は端末ソフトだけでなく、ホストプログラムにも次々と問題を噴出させていく。
オンライン状態(ホストと端末を実時間=リアルタイムでつないだままの状態)で日本語をパソコン上に変換入力するソフト(日本語フロントプロセッサ)がその当時、まだ未開発だったために、テストアクセスで他先輩BBSをのぞいてみると、たいがいはローマ字で入力されていたりカタカナのままだったりしている。したがって、そういったフツーの人達は単純にいうわけだ。
「ここは日本やろ、a、b、c、じゃのうて日本語が使えんといかんな」
「カタカナちゅうのは見にくいなー」
なるほど、一理ある。一般人主体であれば、一般人には当たり前の漢字日本語で通信できなければおかしい。つまりは現況でリアルタイム入力をうながせば、それだけローマ字やカタカナばかりになりそうだったので、
「そういったリアルタイム入力方法は一般的にはしないんだ。オフラインで文章を作ったものをアップロードするのがパソコン通信なんだ」と、いかにも当然のこととして説明して回り、結果的に漢字で通信することを当たり前のような説明ばかりをして回った。どうしてもリアルタイム入力をせざるを得ない部分には、ローマ字だけになってしまわないよう、最低保証としてホスト側にローマ字カナ変換機能を盛り込んだりもした。四苦八苦の説明の甲斐あってか、それとも説明を受けた人達が偉いのか、「コアラは漢字で通信する」ことがごく早いうちに通り相場になってしまった。よそのことを深くは知らない初期コアラの有志達は素直に信用してくれる。混沌は信ずることから抜け出せる、ということか。ありがたいことだ。

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