post168:別府湾みらい21

別府湾みらい21


 両者の動きを知れば知るほど、我が大分、別府湾岸のことがダブって見えてくる。

 大分の経済界は、九〇年より秋月睦男氏が大分経済同友会で、別府湾岸を活性化する「別府湾みらい21委員会」を率いており、その一環として九一年に八月に提言「個性をネットワークする大分・別府湾ビジョン」をとりまとめた。その提言づくりを手伝ったのは先に紹介したが、その中に別府湾岸を見おろす景観のよい場所をリサーチヒルとする情報産業立地区域整備の提言を入れ込むと同時に、今後の湾岸産業がそういった産業部門をより強く取り込むような新ビジョンを掲げるように訴えた。

 そして、それは別府湾岸の市町村商工会、商工会議所と、県、経済同友会といった広域の別府湾岸振興を考える経済団体懇談会の発足に結びついた。

 また翌九二年度より、私は秋月さんのあとを引き継いで別府湾みらい21委員会の委員長に就任。二年間の任期を引き受けるに当たり、「二十一世紀の別府湾岸の産業構造を見直し、新産業を取り込み既存産業がリフレッシュするような『別府湾ビジョン』を検討する」ことを事業内容とした。

 その検討の結果は、九三年三月に報告したが、別府湾の主要産業はIC産業であり、かつ、新産業都市開発で立地し大分をリードしてきた鉄や石油の素材産業、ソフトパークの情報産業、そして、別府の古い産業である観光産業などであるが、それぞれに業界特有の問題点を抱えているように見えた。また、北部九州は日産自動車やトヨタ自動車の九州工場立地など自動車関連産業の恩恵を受けており、大分はそれらをどう取り込むかの課題もある。

 また、数年以内に実現する福岡~大分、北九州~大分の高速道路などの全面開通は別府湾岸にどのような産業変化を及ぼすか。それぞれが未来を見つめて戦略を考え直す必要があった。

 そこで、我々は別府湾岸に新産業として自動車産業の積極的取り込み、並びに各産業を創造的に生まれ変わらせる頭脳を取り込むべく、リゾート&リサーチ産業を考えること、新しい高速交通路と別府湾という良港を生かす港湾流通産業などを取り込むことなどを提言した。既存産業はそれらを意識した取り組みを行いリフレッシュすること、推進する県の機関として新産都開発局に代わって広域的、統合的行政を指向する別府湾岸振興局の創設を行うこと、そして、広域を支える道路インフラ、情報インフラづくりに今まで以上の努力を払うよう訴えた。

 とくに、リゾート&リサーチ産業の代表例としてハイパーネットワーク社会研究所は、年に数度、別府湾周辺で開かれるワークショップに県外から学者や研究者、文化人が集まってくるので、研究所の性格から国家レベルでリゾート&リサーチを実践することになること。かつ、ハイパーネットワークを地域の基幹通信網として整備することで、新産業を誘致したり興すチャンスにつながり、すべての産業の下支えになることを強調した。

 そして、民間側でそれらを推進する協議会組織を模索するため、北九州活性化協議会と意見交換を行ったり、同友会例会に情報通信インフラの必要性を強調するため浜野保樹さんを講師に呼び、あわせてマルチメディア産業への気運を高めるよう展開していた。

 そういった最中にシンガポールとシリコンバレーのことを聞き、どこの地域も同じように考えていると思った。

 だが、それらの地域と大分とでは根本的に地力が違う。

 シンガポールは国としての施策が打てるし、今や成長アジア地域の中心地である。シリコンバレーは落ちたとはいえ、依然世界をリードするハイテク技術や製品をいまだに次々と生み続けている地域。残念ながら大分は世界をリードするハイテク技術の蓄積は薄いし、民間企業が利潤を求めて新サービスの積極的開発投資を行うほどの人口集積はなさそうだ。また国家的牽引力が持てる地域ではないだろう。

 いわばシンガポールのリーダーシップは国家がとり、シリコンバレーのリーダーシップはハイテク企業がとってきたが、大分は市民がリーダーシップをとって情報インフラを求めてきた、ということになりそうだ。

 その違いが情報インフラにも表れているかもしれない。シンガポールは市民ユーザーを育てることに苦心していると聞くし、シリコンバレーはともすればビジネスチャンスを求めるサービスが多いように見受けられる。また、集積するハイテク企業に新技術開発や製品開発のビジネスチャンスを与えることにもつながって、そういったプロジェクトが多い。

 ところが大分はそういったことが少ないので、結果として地域内住民の自己実現、機会開発としてのサービスが前面に出てきてしまう。

 現に、別府の中村太郎市長が情報図書館構想を公文先生や私達に諮問し、九三年三月に基本構想を、九四年二月には基本計画を提出した。デジタルメディア工房を持ち、世界に接続されるネットワークの入り口としての機能などを完備することを組み込み、別府市の地域情報インフラ(RII)であるようにまとめたが、基本は地域住民への機会開発の場、生涯学習の場提供ということがにじみ出ている。

 そうこうするうちにアメリカでは、情報通信をビジネス面から追いすぎているという反動が出てきたようで、民間人二十七人で構成されたNII諮問委員会と呼ばれるラウンドテーブルが九四年一月に設置された。NIIの公共性や企業側論理だけでなく、市民側からの発想で方向性をチェックできるような人員構成が成されたと聞いた。とくにその象徴的人物としてはEFF(Electronic Frontier Foundation:電子フロンティア財団)代表のミッチェル・ケイパー氏がそうであろう。彼は九〇年七月にEFFをジョン・バーロー氏とともに設立し、電子ネットワークがエレクトロニック・デモクラシーをつくりだし、その市民的自由のために存在されるよう、しかも、画像や音声を利用できるような全米公衆ネットワークの構築を目指して運動してきていた。 このNII諮問委員会は、国と地域という規模の違いこそあれ、私が模索し、九二年の桐生フォーラムで提案した情報委員会に似ている。



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