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長いトンネルを抜けた

 

 九三年五月二十一日、ニューコアラ発足記念フォーラム「豊の国ネットワーカーズ・フォーラム in MAY」を行った。

 四月一日より新体制に移行したものの、本当の過去の精算、未来への第一歩は会員相互の心おきない交流からであろう。新体制は数年間は緊縮財政を余儀なくされており、とてもイベントを打てる余裕がなかったが、悩んだ末、県や情報センターの応援を得て、またアルバムの発行などをさらに縮小することなど経費削減を期して、一つの区切りとして断行した。

 会場は、その四月に情報センターの隣にオープンしたばかりの県のインテリジェント・ビルである第二ソフィアプラザビル二階のソフィアホールで行われた。

 当日は、できたばかりのハイパーネットワーク社会研究所をアピールするため、公文先生や会津さんにもきてもらったし(逆に二人はお祝いに駆けつけてくれた)、基調講演を市民講演会と銘打って浜野保樹さんに〝ハイパーネットワーク社会研究所主査〟として行ってもらった。

 彼は一週間前にアメリカから帰ってきたばかりということで、ゴア副大統領の押し進めるデータハイウエー構想の最新情報やその意味するところなどをビデオを駆使して「空想から現実へ・ハイパーネットワーク!」と題して講演。日出会議や別府湾会議などと違って一般市民に開放した講演会にふさわしく、「なるほど、それでハイパーネットワーク社会研究所が必要なんだね。大分も捨てたもんじゃないじゃないか」と参加者から感想が聞かれ、やっと研究所とコアラが両輪の輪になりつつあるなと、感じる。

 そして、次はパネルディスカッション。

 「興奮! 〝列島ネットワーカーズ・パネル〟

   多極型電子ネットワーク列島公開事務局会議 」

 桐生フォーラムで発表し、九三年一月一日から動き始めた全国的電子近隣社会プロジェクト(NNプロジェクト)はおおにぎわいであった。

 桐生で五つの事務局が額を寄せあった際、居合わせたネットワークコンサルタントの杉井鏡生さんに共同議長をお願いした。杉井さんはパソコン通信黎明期にPC-VANなどで「おじさんクラブ」なる愉快なグループをつくり運営してきた経験がある。それだけに大人数を対象にした電子会議のモデレータとしては最適者で、各ネット内に親交ある人達もいて、大手全国ネットとはひと味違った、地域単位のそれぞれの地域文化を背負った列島交流を導き出していた。

 そこで、各事務局の人達に大分に集まってもらい、パネルディスカッションを行いつつ、途中経過の報告を出し合ったことになる。もちろん、モデレータは杉井さん。

 それによると、各ネットはそれぞれ二千人前後の会員数であるが、五つが集まると1万人であり、各ネットからアクティブなメンバーが選抜されたような交流が起こっていて、大手ネットに遜色ない質・量を伴った書き込みになっている。かつ、実名参加が前提であって、地域名と実名が発言に具体的なイメージを与えているので確かに親しみが増すし、大手ネット以上のおもしろさがあり、電子近隣社会そのものだ。地域文化とは風土上のこともあるが、同じシステムを使っていながらネットそのものに文化の違いがあることが五つを比べると明確にわかってくる。あるところはチャット文化であり、あるところは掲示板文化、あるところは事務局が表に出るネットなどなどいろいろだ。

 また、事務局だけの非公開連絡会議があって、NN連合として〝新番組〟をつくろうと話し合ったりしているし、運営上の悩みを相談し合ったり、システム構築の情報交換を行うなど、事務局同士のメリットの大きさにも気がついてきた。やはり東京対地方の交流ではなく東京を抜かした地域間交流のメリットが出たと考えるべきだろう。それぞれ互いを尊敬し合っていて、互いの地域がそれぞれに主人公であるような付き合いであるのがおもしろい。キチっとした組織でなく、(旧コアラ組織のように)ゆるやかな結びつき、連合であるのがよい。

 各ユーザーは自分のホームネットにアクセスすることで、使い慣れた環境のままに全国と交流できる会議室の仕組みに、取っつきやすさ、安心感を感じるようだった。昔なつかしい隣組みの近隣社会が、日本全国に点在して広がりを持ったような個人感覚だ。親しみは当然ながらモノのやりとりに発展していて、当日はフォーラム後のパーティ用に他のネットから地酒が寄せられてきている。コミュニケーションが始まればモノも動くし人も動く。事務局が一堂に会したことこそ人が動いた証拠。そういえば、今の私は「青森に行く」ということを「道新オーロラネットとコミネット仙台の中間地域に行く」という解釈をするほどに、NN地域に親しみを感じている。コアラすれば札幌も仙台も電子近隣社会なんだ。

 こういった地域間交流による全国組織こそ二十一世紀の多極型日本列島をつくり出すだろう、と力説した。NN連合におもしろさと全国ネットに対抗できうるチャンスをみんなで確認するよい機会となったし、ハイパーネットワーク社会研究所にこういった地域間連携のあり方を研究してもらうことこそ、もう一つおもしろい。

 そうやって徐々に盛り上がっていき、夕刻の「皆が主役、ネットワーキング・パーティ」と相成った。後藤会長の挨拶、名誉会長である平松知事の挨拶、そして公文先生の乾杯、とコアラの顔が揃っている。それぞれにユーモア一杯で会場を沸かしている。知事は、

 「オーストラリアのコアラは、輸入する時に一度カネを出せば、あとは放っておいても大きくなる可愛らしい動物だ。が、大分のコアラはやればやるほどお金がかっかってしまう(爆笑)。

 最初はコアラ陳情といって、ダイレクトに私に『家の前の道路をなおしてくれ』などということがおこったりで、パソコン通信は面白いな、しかし、全部返事を書くのはたいへんだ(笑い)などと、思った。なかなか便利なもんだ、と感心していたのだが、そのうち大分県内どこからでも市内電話料金で通信できたほうがよいということで豊の国ネットをつくった。これはうまい具合にふるさと創生資金を使えたのでよかった。関係者の一度の陳情もナシだったが(爆笑)、県はカネは出すが口を出さないようなことになっているが、福沢諭吉の天は自ら助くるものを助くということがある。大分は一村一品の精神として『県は自ら助くるものを助く』ということで、自助努力を行うところにはそれ相応に応援していくことになっている。そして、昨今はマルチメディアだ、それをネットワークするハイパーネットワークだ、ということを教えてもらって、とうとう(またお金をかけて)ハイパーネットワーク社会研究所までつくってしまった。

 今日は県外からたくさん優秀な人達がお見えになっていると聞いているが、皆さんぜひともこの研究所の研究員になっていただいて、ちょくちょく大分にきてほしいし、いっそのこと住んで欲しい。公文先生も住むことになっていますんで。そして、どうぞハイパーネットワークの中心地に大分がなってくれることを期待したい。

 また、最近は政府が『新社会資本』などという耳慣れぬ言葉を言い始めているが、これこそまさに皆さん達がやられてこられたことが評価された、先見の明があった、ということでしょう。これからもしっかりやってほしい。しかし、何といってもコンピュータネットワークはその上に乗っかっているヒューマンネットワークによって成立し発展していくということを理解し推進していくということを理解し推進しているのがコアラの特色なんだから、今日はまさにそういった会合の場であるし、おおいにヒューマンネットワークをつくるよう楽しみましょう」

 と挨拶された。

 一気に盛り上がって会員達はおおはしゃぎ。若い女性達は入れ替わりに知事と写真を撮ったりしているし、会場で披露されている「ディジタル・ビデオ掲示板」に思い思いに発言を掲示し合っている。知事も後藤会長も公文先生も浜野さんも、皆その前で何か録画させられている。

 一方、その年の春から県立芸術短期大学コミュンケーション学科の二年生の女学生百人は、インターネット経由でコアラを使った授業を実施していて、その女学生達も十数人きて知事の名刺をもらおうと列をなしている。会場後ろでは、コアラの居酒屋会議室のメンバーが陣取ってNN地域から集まった日本酒をワイワイ楽しんでいる。ノミニケーションそのもの。

 ニューコアラが発足するにあたって企業の人達から賛助会費をいただいたが、その代表の人達も一風かわったパーティを楽しんでいる。ここまで苦労してくれ四月に移動した情報化推進室の前室長であった山田さんも、さらにもう一代前の武田さんも喜んでくれている。後藤専務理事もそうだ。現職の情報化推進室渡辺室長や担当の村山主幹、是永副主幹も盛会な情景にほっと胸をなでおろしているようだった。

 みなさん、ありがとうございました。おかげでみんな喜んでいる。 オンラインではNNの他地域の人達が、大分のこのイベントをうらやましがるメッセージを書いている。

 会員も関係者もみんなニコニコしているのを見て、とにかくほっとした。肩の力が抜けるような気持ちだった。そして、九一年春に入り込んだ長い長いトンネルをやっと抜け出たようだった。



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