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コアラからニューコアラへ
この一年、情報化推進室の山田室長はよく頑張った。
彼も、はじめての情報化セクションに戸惑っていたが、箱根会議に同行して大分の先進性が評価されるのを目の当たりに見て以来、さまざまな迷いが吹っ切れたようだった。その迷いの中には当然ながらコアラの新体制づくり問題も入っていたようで、それ以降はこちらの話をそれとなく理解してくれるようになった。
そして研究所設立が見え始めた九三年三月。三年前の日出会議からの一連の動き、大きなうねりの最後の仕上げであるコアラの新組織づくりにいよいよ取り組んだ。
彼は、一年間でコアラが民と官との複合体でなければうまく機能しないことを理解し、情報センターの後藤専務と相談、三月二十五日地域総合ネットワーク研究会を開いて、県がバックに座り、民がリードする形態を了承。つまり県営論を引っ込めたが、県が正式にバックに座る準県営方式を考えることにした。また、今までのコアラを発展的に解消し、新しい運営体が運営を引き継ぐが、ユーザーはその新運営体と個別に利用契約を結び、運営と利用を明確に区別することにした。やはり会員数が多くなると「総会によって運営方向」を決定することは難しいし、それだけ運営は専門的にならざるを得ない。
そして、その新運営体は、大分の情報化・公共的ネットワーク整備を真剣に考える5人の人間が自発的に集まりできたもので、
会 長 後藤 国利(旧コアラ会長)
副会長 大分県企画総室長
副会長 (社)大分県地域経済情報センター専務理事
委 員 宇津宮孝一(大分大学教授・学識経験者)
委 員 尾野 徹 (旧コアラ事務局長)
とし、副会長に行政がしっかりと座った。これで安定感が増すし、民がリードする形態は踏襲されたことになる。
名誉会長を今までどおり平松知事にお願いすることにしたのはいうまでもない。
また、ホストコンピューターは、県や民でお金を出し合って整備するがその所有は情報センターとして、情報センターと新運営体が運営契約を行うこととした。
私にとっては、情報市民公社が行政管理方式、企業管理方式、市民管理方式の三者の混合体であるというならば、この新運営体は行政と市民の混合体が実現できたことになり一歩前進したように思えた。また、情報センターそのものが行政と企業団との混合体であるので三者混合体への道がみえなくもない。県としても、公共的コミュニケーション・ホストの運営ノウハウを民の中から得つつ、企画総室長と情報センター専務理事が副会長に座れば、全体をバランスよく管理できるように思えたようだった。
さらに、新運営体の名称は、一昨年前までは県はコアラの名称を残すか残さないかで明確なスタンスがとれていなかったが、後藤専務は昨今の動き、見学者の反応を説明しつつ、コアラの名称が一村一品的に県外に知れていることを考え、何とかして残したほうがよさそうだという結論を導き出した。そして、ネットの名称として「ニューコアラ」運営体の名称として「ニューコアラ運営委員会」の二つの呼び名があること、さらに行政的日本語名称、たとえば「大分県高度総合情報ネットワーク」などという呼び名を正式名称にしないことに同意。単純明快に「ニューコアラ」を正式名称とした。
コアラの略称は以前は、
Computer communication Oita Amateur Research association
であったが、
ニューコアラは、
Computer communication Oita Advanced-public Regional association
と考えることとしよう。
ただし、問題があった。五人の委員の任命と欠員時の補充方式である。
任命を県が行ったり情報センターが行ったりするかぎり、その新組織は自主性をなくしてしまうだろう。それであったなら県営論と同じことになる。だからこそ、今回は自発的に五人が集まって運営体が組織されたという形態であったが、補充はどうするか?企画総室長と情報センター専務理事は当て職として適時補充されるであろうが、後藤会長や学識者としての宇津宮さん、私はどう補充されるか?これは結論が出ない。一般的には残りの者で該当者を探し補充する形態になるのだろうが、ずーっとそれでよいのか?不偏不党であることをどうやってこの委員会が社会から承認されるのか?私としては一年前に〝情報委員会〟を考えたように、将来はこのメンバーを知事が任命、議会で承認というより信頼を得る形態であるべきと考えている。が、そうは簡単に制度ができるわけがない。試行錯誤を繰り返しつつ近寄っていくのだろう。
また、今後の問題として一番のネックは、私の事務局長としての立場だろう。今回も新運営体の当面の事務局長の仕事を私が受け継ぐことになったが、いつまで続けるか、いつまで続けられるかが、当然問題。後継者を育てねばならないが、黎明期の混乱がなくなったとしても結構ハードで時間を取られる役であるのは間違いない。ある程度の専門知識が要求される。継続性もある程度必要。やはり〝情報委員会事務局〟と呼べるプロのチームが必要に思える。〝アマ〟でやれる範囲を超えているしボランティア範囲を超えてしまったことは、皆わかっている。 しかし、今回はプロを養い育てる資源が用意されない以上、この部分には手が出ない。利用者拡大を図る中で、また公共機関、行政の積極的利用を促進する中で、プロとしてのチームをつくるよう努力していかざるを得ない。行政が〝市民に使わせる立場から使う立場〟に変化した時に、専門チームが育つチャンスがある。
そして、何よりも今までのコアラユーザーが、新しくなった組織やネットワークに対して「オレ達のネットだ」「私たちのネットだ」という愛着を持たねばならないのはいうまでもないことだ。今まで同様、ユーザーの意見や考えを運営に繁栄させるために〝コアラ例会〟を存続させることを山田室長や後藤専務理事は望んだ。
そういった市民、ユーザー本位がなくなってしまえばコアラ存続の意義もなくなるのだから、いざとなったらコアラの存在そのものをやめられる仕組みもつくっておきたかった。不要になったネット、市民から愛されなくなったネットを無理して抱えるよりも、いざとなれば不要だと割り切る運営ができることも必要に思える。利用者にはいざとなれば数ヵ月間の通告のあとにネットを閉鎖できる仕組みを持つことを理解してもらおう。ということで、明文化こそしなかったが、三年間程度の試行期間としてこういった形態を取ってみよう、そのあとによりよい智恵が見つかるであろう、と皆で話し合った。 さて、そのためにはまず、今までのコアラの解散させねばならない。
三月二十七日土曜日の午後二時、事前にハガキで呼びかけておいたコアラ総会を開いた。例会と違って総会ということからか、時間どおりに集まってくるようだった。二時の時点で会場のイスの八割ほどが埋まっていた。
さて、開催。後藤会長の挨拶。
設立当初のエピソードを話しつつ、たとえば、最初の事務処理を情報センター職員の雪野さん(会場に座っている)が引き受けてこのコアラがスタートしたことなどを披露しつつ、いよいよ会員が多くなったりしたことで今回ホストコンピュータを入れ替えざるを得ないこと、そのために大きな資金が必要であり、コアラだけではその資金手当てが難しいこと、またそのコンピュータをコアラだけで使うというよりも広く皆さんに使ってもらうことも考え、かねてから例会などで話があったように今までのコアラを発展的に解消し、新組織を発足。そこに今までの資産や経緯を移管させるための総会である旨を挨拶した。また、会長は、
「〝コアラ〟はコロンブスを使いこなすことを目的にスタート。自分達自身が楽しむと同時に全般的に大分県の情報化に寄与してきた団体。〝情報センター〟は、陰に陽に、有償、無償のサポートをしてきたこと。〝県〟は、バージョンアップの節目ごとに費用負担を行った。また、ユーザーでもあったということ。つまりは、コアラホストなどの構築は、市民、民間企業、市町村自治体、県、国、それぞれが互いに協力し合って構築してきた経緯がある。そこで、上記三者が新たに協調して新組織を協調発足させる」
「ユーザーは運営委員会と利用者懇談会などで結ばれること。さらには、運営委員会事務局が設けられるであろうが、その運営委員会事務局内に、今まで同様、ユーザーの中から運営スタッフが求められるであろう」
とも説明した。
私は緊張している。株主総会の感覚だ。
以上の説明のあと、今までのコアラを発展的に解散、四月一日からのニューコアラへの移行を資産移管を含めて引き継ぐことが了承された。また、今後つくられるであろう新規約(ニューコアラ利用規約)の中に、とくに今までの実名ネットワークの良さを引き継ぐため、「ニューコアラの会員は、氏名や住所などを原則として公開することを前提に入会する」という主旨を入れるであろうことを含めて、全出席者の了解、賛意を得た。
そして、週が開けた月曜日三月二十九日十時三十分より、情報センターにてニューコアラ運営委員会の発足が行われた。
慌ただしい3月であった。

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