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パソコン通信ユーザー第三世代
コアラ内の和気あいあいのムードと、県外での大分の情報化政策の評価は新しいメンバーを産み育てていく。
大分にUターンして家業の布団販売店を手伝っている森晴繁君が相談がある、という。えらく改まった口調なので、何だろう、と首を傾げながら聞いてみると、県の村おこしグループ事業にコアラメンバーでチームをつくって応募したいが、そのチーム名にコアラの名前を冠して使っていいだろうか?という。
そりゃぁ、名前を使うことはかまわないが、何のこと?
県庁広報公聴課は九二年度(平成四年)になって、県の新しい地域おこし政策の一環としてNEO21塾(NEO;New Exciting OITA! )を新発足させる。ついては独自の事業アイディアを持ってチームを組んで立候補すれば、その地域おこし学習に予算を付けようという。それで、それに「コアラNEO21」という名前で応募したい、ということだった。
おもしろい。
コアラ創設期の私達は「地域おこしとしてパソコン通信に取り組んだ」のだが、彼らは「せっかくあるパソコン通信を使って地域おこしをやってみよう」というまったく異なる世代のようだ。しいていうならば、私たちが第一世代ならば、第二世代は「パソコン通信を楽しむ」グループであったし、そういった会員の広がりがここ昨今の動きであったが、彼らコアラNEO21グループは第三世代とでも呼べるのではないか?
彼らは「公共ネットワークとなっているコアラや豊の国ネットを使って、大分を知りたい多くの人達と語り合い、何かを生み出したい。新しい大分づくりに取り組んでみたい」という主旨で、応募時点からコアラのグループコミュニケーションの力をうまく利用している。意志疎通がよい。会合があって欠席者があっても電子会議でコミュンケーションをフォローするし、応募書類のデータ持ち寄りにも使う。これはいい。
どうやら十二のグループから応募があり、四グループが合格となったが、広報公聴課は従来の町おこしにある「町並み再開発」や「国際交流」などのキーワードとは異なるパターンを持つこのグループに期待を寄せて合格通知を出してきたようだった。リーダーは菅健一さん、メンバーは佐藤国晴、石田洋子、松村知美、戸次栄子、仲矢智絵、帆足美佐子、藤井慎吾、佐々木義郎、松村亮司、藤尾寿、村上正人、金山英三、水口洋、帆足慎二、森晴繁 の計十六人。顔ぶれを見て、なるほど、情報センターに専属事務局員の仲矢さんが存在していることの意義を改めて感じた。多くのメンバーは、彼女のところに時間があるたびにちょっと顔を出し合っている人達で、中立の事務局のよさを、改めて感じてしまった。
彼らは二年の事業期間で行動するのだが、当面の活動として何をするかを話し合い、まず、よその地域のパソコン通信ユーザーがどんなことをしているかも知りたい、ということで群馬県桐生市で秋に行われる「ネットワーキングフォーラム’92inきりゅう」大会に参加することを決めた。
他方、私は、会津さんや群馬県桐生市の渡良瀬ネットの久保田芳男さん、塩崎泰雄さんから依頼があって桐生大会の実行委員兼企画委員に委嘱されていた。その委員委嘱の打診は春にきていたが受けるに当たって、「私は運営について悩んでいるから正直いってよい話ができるかわからない。それに、もし、私が出るならば、私にとって一番興味のある問題、または、一番悩んでいる問題を議論すると思うがそれでよいか?」と念を押していた。
そういったこともあって、六月二十五日に行われた第一回目の企画委員会の時、「テーマは何になるか」と問われたが、正直に「地域ネットは生き残れるか?」を議論したいと申し入れた。
過去一年間の運営上の悩みはまだ完全には抜け切っていないし、そのことだけでもおおいに議論するに値するだろう。サンフランシスコのWELL同様、メルトダウンせず、運営上の問題から脱して生き残れるかということが第一番に議論されるべきであろう。
しかし、それだけではない。とくに昨今の他のメディアの動きが気になっていた。
大分にとってニューメディアはコアラではない時代になっていて、衛星放送が始まって以来、コアラよりも二十四時間見れるテレビのほうが目新しい。昔はテレビは三局のみであって深夜になると楽しめるメディアがなかったからパソコン通信コアラが注目されたのかもしれないが、今や、NHK衛星放送やWOWOWや、九〇年十月開局した大分ではじめての民放FM局「FM大分」、昨今復調気味のCATVが毎晩楽しくさせてくれている。都会と同じサービスを届けてくれている。そういったもっとおもしろいもの(?)があるのに地域ネットは必要とされ、生き残れるか?
パソコン通信そのものは、普及に拍車がかかってはいるが、地域ネットで元気なところは聞かない。ユーザーが増えても地域ネットへの入会ではなく、大手ネットへの入会で普及しているのであり、地域ネットはほとんど大手に押しつぶされたような格好だ。その種の雑誌や本は大手のNIFTY-ServeやPC-VANを前提にしたものが続々と出版されてくる。九州最大都市の福岡の話もあまり聞かない。そういった全国の中核都市は大手ネットのアクセスポイントがしっかり整備され、東京とまったくかわらないサービス環境が整えられ、ユーザーがほとんど吸い上げられてしまっているようだった。高速道路のストロー現象そのもの。
地域ネットを社会インフラに!などというところは限られてきているし、いっていたとしても元気がなくなってきているようだ。コアラだって運営問題は深刻な存亡問題だ。地方に数多く存在するネットは目的別の縦割りのネットであったり、または趣味のBBSというイメージが当たり前になってくる。どうやら社会インフラネットはNIFTY-ServeとPC-VANという、メーカー系の東京一極集中型の全盛時代に入ったようだ。大手ネットはついに黒字経営になったとまで発表され始めている。大手ネットと比べて遜色ない魅力的地域ネットとはどういったことなのか?地域ネットは本当に必要とされるのか?
さらに技術は進み、先進パソコンユーザーはマルチメディアに一生懸命になりつつある。コアラはいち早くその動きをネットワークに融合させようと「ハイパーネットワーク」なる概念を追い求めているが、一般的には通信を伴わない〝マルチメディア〟だけでも市場をあおれる。マスメディアを引きつける新しい題材だ。
加えてもっと先進的なグループは、学者や研究者によってつくられてきた全世界の学術研究ネットを結ぶ〝インターネット〟に興味を示している。マルチメディアはパソコンの能力がアップしたことで論じることが可能になったのだろうが、このインターネットも、昔は大学や研究機関で共同で持っていた高価なワークステーションがダウンサイジングで気軽に持てるようになったことからか、研究者間で電話機並にコミュニケーションの道具として世界的に使われ始めたようだ。そういった人達の名刺には全国、全世界共通の電子メールのアドレスが書かれるようになってきている。利用者の数からいうならば、NIFTY-Serve、PC-VAN、アメリカのコンピュータサーブより大きな社会基盤電子ネットワークになっている。加えて、パソコン通信のようにホストを共同利用するということではなく、互いがホストである、というパソコン通信の概念を一歩進めたものを持っている。一人一人がパソコンまたはワークステーションを持ち、それらが専用電話回線で芋づる式に接続されており、個人は自分が皆に見せてよいと思われる情報は自分のワークステーション内の公開のエリアに入れておけばよい。希望するものは誰でもそれを見たり入手したりできるという仕組みは、超高機能パソコンが一人に一台の時代にはもっともありそうな、新しい電子ネットワーク社会の姿を見せている。
しかし、この利用は文部省に関係する大学や研究者のみに利用が制限されていて、まるでバベルの塔であり、一般人は仲間に入れない壁の高い「学者ギルド」のように思えてくる。かつ、もっと悪いことに専用線の利用を前提にしているのだから、今、既存の海外との出口を持つ東京に近いところでなければ、通信料金上とても利用できるものではない。東京から離れた地方であればあるほど「世界につながるインターネット」とは無縁であり、インターネットを欲する企業や一般研究者は何らかの利用チャンスを求めて東京に集まっていく。
ああ、またもや東京一極集中!
技術の進歩は、またもや地方をおもしろくないものに落とし込み始めている。
しかし、負けられない。何か新しい仕組みがあるはずだ。せっかくのコアラをきっとそこに進化させることができるはずだ。マルチメディアとインターネットを飲み込んだハイパーネットワークが必ず構築できるはず!
それを打ち破ってこそ、地域ネットは生き残れるはず!

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