post140:第六章 成功、混沌、模索 死すとも発言は生き続けて
第六章 成功、混沌、模索
死すとも発言は生き続けて
日出会議の件を悩んでいた九〇年元旦昼さがり、「さかな・魚」会議の高松館長が急逝されたらしい、という噂が流れてきた。
毎年、元旦は若いコアラ会員が我が家に何とはなしに集まってきているが、その一人が車の中でニュースを聞いたという。慌ててテレビやラジオのニュースを待つがよくわからない。新聞は二日先でないと配られない。コアラにアクセスしてみたら、TOSテレビ大分に勤める友田さんが昼のニュース原稿をそのまま引用して、「午前一時一〇分ごろ春日町のマンションで、最上階に住む大分市の生態水族館マリンパレス館長高松史郎さんの部屋から出火。約二時間後に鎮火したがそこから男女二人の遺体が見つかった」「娘さんが衣類からどうやら高松館長夫妻らしいと確認した」とのこと。
ショックであった。
コアラがスタートしてもうすぐ五年になるが、その間、会員同士の結婚、その夫婦からコアラ二世の誕生など、さまざまな経験を経てきていたが、はじめてのネットワーカーの死である。電子コミュニティで心を共有し合っている、というアメリカのネットワーカー達の事例を聞いてはいたが、彼の死は推測していた以上にこたえた。若い会員が私の家に集まってくる。涙を流している女性もいた。高松さんは全国的に名前の知られた学者だけあって、オンラインでさまざまな哀悼のメッセージが寄せられた。しかも、彼は日本のパソコン通信界で特定分野の専門家としてはじめて電子会議を開き、かつ、常設で運営したことはよく知られていたのだから。
葬儀には多くの人達が会葬した。コアラメンバーも多かった。職場や親族の人達にはオンラインのつながりが見えず、若いメンバーや職場に縁の薄いメンバーの参列には戸惑いを感じたかもしれない。私は、遺族となったまだ学生の二人のお子さんに対して、いずれ心が落ち着き、父親のことをもっと落ちついて考えられるようになった時、さらにはパソコン通信がより当たり前になり、戸惑いを感じないと思われるようになった時、お父さんの心を読みとれるものとして「さかな・魚」会議を印刷製本して届けよう、と期した 。
会員番号 : COA00195 会員名称 : 高松史朗 会員愛称 : FISH 住 所 : 大分市高崎山下海岸 電話番号 : 0975-34-1010 FAX 番号 : 職 業 : マリーンパレス(大分生態水族館)館長 メ モ : 前回終了 : 89年 12月 31日 12時 38分 |
彼のタイムスタンプは一九八九年一二月三一日、十二時三八で停まったままである。が、彼の発言はメモリの中でいつでも、いつまでも発言し続けている。

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