post132:イノベーションが新しい社会通信システムを産む
イノベーションが新しい社会通信システムを産む
この八八年頃は、会員の拡大が目覚しかった。年当初は、発行済みID番号は七百番台であったのが、夏にはついに一千番台を突破した。
会員拡大に一番効果があったのは、新聞や雑誌等によく取り上げてもらったことではあるが、利用を促進させるシステムの発展があったことはいうまでもない。この時期、ついに念願の遠距離の通信料金を安くする個人課金VANが実現した。
東京在住者がイノベーションとしてのコアラに興味を持って入会したとしても、一、二カ月すると一時間八千円という通信費の高さに閉口して自然に静かになってくる。
NTTのパケット通信であるDDX-TPは、元来、市民のパソコン通信利用を対象として想定しておらず、中小企業等のビジネス利用を考えていたものということもあってか、担当部署の苦労にもかかわらず、相変わらず使いにくく、改善の見通しも立たなかった。
そのDDX-TPの通信料金は、通信方法や通信データによって可変になるパケット量で計算され、東京からコアラすれば一時間千八百円から三千六百円ぐらいの幅であっただろうか。市民利用者は請求書がくるまでは結局、料金がわからないというわかりにくさもあって利用が精神面からも利用が進まない。
個人でも使いやすい民間VANの存在が一刻も早くほしかった。
そうこうするうちに、八七年の暮れ、インテック社がそういったサービスを開始するというニュースが入ってきた。さっそく問い合わせたところ、〝Tri-P(トライピー)〟という商品名で準備中だという。また、試験的に東京のEYE-NETへの接続を試みようと考えているというので、
「試験をするならぜひともコアラを対象にしてくれないか。新しいものは東京の人達が敏感だろうし、東京の人達は東京のネットにアクセスするのにTri-Pはいらないだろう。コアラは地方ネットだし会員の半分は県外で、そのほとんどは東京メンバーだ。かつ、全国大会を行ったぐらいだから、先進的ユーザーや各地のホスト局関係者が何らかの形で関係を持っている。一般ユーザーを確保するのにも、接続ホストユーザーを探すのにも好都合だよ。ぜひともコアラをよろしく」
と猛烈に訴えた。そのうえ、
「大分には平松知事がいて、御社の金岡社長とも知事は懇意だし、その縁もあっておたくは大分営業所を出しているではないですか。コアラを試験的に使って、そこを有効活用しましょう。それがコアラ名誉会長の平松知事と金岡社長の両方の顔を立てることになりますよ」
と情緒的訴えも行った。
担当は営業の西尾啓伸さんでコアラのことをよく知っており応対が素早かった。早速、通信料金制を「一分十円」という誰にでもわかりやすい時間課金方式で準備をし、かつ、コアラを試験ホストとして使うように社内調整を行ってくれた。
年が明けて一月に入ると、あたふたと仕様打ち合わせ、専用線引き込みを行って、二月十一日試用・試験サービスにこぎ着けた。本来のサービスは三月初旬(コアラのみならずTriーpのサービスも)を予定していたので、二月いっぱいは皆に知ってもらいたいと、無料で開放することとしてくれた。その二月十一日、遠距離通信料金が安くなれば、コペルニクス的意識変革が行なわれるだろう、という〝予言〟どおり、コアラのなかは大騒動になってしまった。
たとえば、東京大学の公文俊平教授も、
「Tri-P初アクセス!
今、Tri-Pを使っての初アクセスです。これは快調ですね。文字化けもないし、何より料金を気にしなくていいのがありがたい。これでなくちゃ。
『るんるん』という言葉の語感が、きょうはじめてわかったような気がします!」
と書いていたり、東京都立科学技術大学の八戸信昭先生も、
「『Tri-p』は,今まで距離に伴う電話代の負担増という
問題をいくらかでも解決してくれるということで、評価されてもいいと思います。
コアラに入っていてよかった・・・という気持ちを強く持っています。今度の知らせは、福音でした」
などと、書いてくれている。
「全国大会で一生懸命通信したら五万円の請求書がきたのでおとなしくしてたが、これなら大丈夫。うーんとコアラするぞ!」と復活宣言をしたりと、東京からだけでなく、北海道や東北、関西、四国からも喜びの声が聞こえてくる。
何てったって、全国主要都市から、一時間八百円(Tri-Pが一時間六百円に加えてTri-PのアクセスポイントまでのNTT料金が二百円)で通信できるわけだから、これはもう、東京も北海道も、すべて大分の隣にある感じ!人と人を遠ざけていたのが物理的距離と言うより通信料金であったことに、何か割り切れなさを感じつつ、とっても幸せな気分になってしまう。本当にうれしい。
コアラが始まって以来、東京に打って出て以来、堂々念願していた地方ネットワークの東京ノード開設の第一歩がまず進展したということだろう。ひと月ほど遅れて、(株)ネットワーク情報サービスのTYMNETとも接続が実現し、コアラの全国からのアクセス方法は飛躍的に改善されたこととなった。

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