post118:いよいよ全国大会!

いよいよ全国大会!


 当日の朝は、午前四時三十六分、福井の西村明朗さんの全国から集まってくる足音が聞こえるような喫茶への発言からはじまった。

 「いくぞ いくぞ いくぞ!!! 

 ただいま   四時三十四分です いまから 電車の駅にむかいます

  ラララ 空を越えて ーーー   

   とにかく いきまあーす   」

 前夜からきているネットワーキングデザイン研究所の東京側スタッフも、大分側スタッフと一緒になって最後の準備作業に取りかかる。十三時の開会ではあるが、十一時四十分から受け付け開始。遠くの県外の人達から順次会場に到着し始める。当初の事前申し込みは二百七十名であったが、その他にも六十名近くが当日登録参加。遠くは北海道から六名、東北、北陸、関東と、県外から百七十名の人達が参加。顔ぶれも自治体あり、中央官庁あり、民間団体あり、シンクタンクあり、学者、中小企業経営者、ジャーナリスト、個人、主婦、学生、これまた多彩であった。

 基調講演部ではさらに膨らみ、受け付け総数五百五十人となって会場のトキハ会館大ホールは立ち見もでるほどの大盛況となった。

 平松知事の基調講演、いったいどういった話をするのか?参加者が興味津々であるのがよくわかる。県外の人達にとって「噂に聞く〝ネットワーカー知事〟ってどんな知事なんだろうか?本当にパソコン通信のことがわかっているのだろうか?」と気になるところであろうし、県内の人達にとって「マニアと思っていたパソコン通信の全国大会が通産省の肝いりで大分で行われる、それを知事がどういう風に受けとめるのか?」と興味津々であっただろう。

 大分県庁電算課は、前夜、パネラーおよび実行委員会委員の人々と、歓迎と全国大会実現への感謝の意を込めて、知事を交えて簡単な交流会を催したのだが、知事はそこでもいろいろとヒントを得て講演内容を補強したようだった。

 知事は、実際のコアラメンバーとのメールのやりとりの経験を紹介しながら、

 「大分のテクノポリスは分散型で工場を誘致しており、そのためにも情報ネットワークが必要。そしてリンカーンの言葉のように『県民の県民による県民のためのネットワーク』を必要とする。ニューメディア、ソフトなければただの線、ではまずい。

 コアラの成功の秘訣を考えてみた。メンバーひとりひとりが発信者であること。普通のメディアは情報を受け取るだけだ。遊・感・創の中に遊びが入っていることが鍵。一村一品は単なるモノづくりではない。モノが氾濫すればするほど人は集まってくるし、情報が流れれば流れるほど人がオフラインで集まってくる。

 今後コアラはどうなるか。ビジネス云々という声もあるが…。地域連合は必要だろう。地域と地域が人とモノを情報化の中に置かなくてはならない。地域と地域を結ぶ情報ネットワークをつくっていくことが大切になる。東京に集中するのではなく、地域連合の情報ネットワーク。インターブロックに人とモノと情報を交流させる手段としてパソコン通信を利用できるのではないか」

 などと話した。

 代わって公文先生の基調講演は、ぜひとも大分の人達、コアラに縁の薄い人達に聞いてほしい内容だった。その要旨は、第一回の春のフォーラムのまとめを行いつつ、それ以後に進展したネットワーク実践から導き出される内容をわかりやすく論理的にまとめた内容だった。今後、情報ネットワークをベースに地域が活性化していくだろうと期待を込めて話しながら、

 「しかし、ネットワークの影の部分もある。新しいリテラシーがどうも必要だということが分かってきた。誰もが書けることから書き、相手に伝えることがいかに難しいかということに気づく。人の書いたものを十分理解する能力もより一層強く求められてくる。コンピュータリテラシイーというものは日常とは違う、何か別のものという感じがあったが、ネットワークリテラシーは生活の中、普通の言葉の問題として出てきている。

 また、ネットワークの中にROM(リード・オンリー・メンバー)、読むだけの人がいる。書き込む人の数が限られているから、今はシステムが動いているが、一千人、二千人のメンバーが毎日一つ二つ書くようになると、さらに増加して何万人になってくるとたちまちパンクしてしまうし、アクセスさえできなくなる。朝起きて一度にメールが二千通もきたらどうするのか。

 物理的なものだけでなく、改めてネットワークの適正規模を考えることが必要だろう。比較的小規模のネットワークにそれぞれの人達が参加する、そして全国的なネットワークにはSIGのような形で参加する、このような複合化ネットワーク社会になってくるのではないか」

 と話した。

 また、そのあとのパネルディスカッションに向けて問題提起も行った。

 今後の情報ネットワークは

  1. マスコミ型のニューメディアか、パーソナル型のものか?(不特定多数でもパーソナルでもなくて、せいぜい数百~一千の間で、互いに通信をするのが基盤になると思うが、どうなるだろうか)
  2. 利用の方法はコミュニケーションを中心におくのか、データベースの利用を中心におくのか?
  3. パソコン・ワープロ通信はアマチュアの趣味の範囲か、それともニューメディアのように企業が事業化の対象として取り組むものが主流になるのか?(ビジネスと趣味は対立するものではない。情報収集を目的としたビジネス利用はパソコン・ワープロ通信の中では長続きしない。そこに信頼関係がないからだ。個人と個人の信頼関係が社会生活の基本であり、情報を共有できるのはネットワーク仲間だけだ。情報をシェアすることで、より適切なサービスが選べるというようなビジネス側との協力関係をどうつくっていくかが問題だ)
  4. ネットワークのリーダーは国か、自治体か、個人なのか?

 などなどだ。

 会場のあちらこちらでカチャカチャとキーボードを叩く音がして、コアラや全国のネットワークに実況中継風にレポートが流されていく。富士通の神田泰典さんがPC-VANを見て「すごい、すごい!」と急いでコアラに書きにくるなど、さながら日本中が〝興奮〟したように思えたのは身びいきだろうか? 当日は、プログラムなどの一般的フォーラム資料の他に二百ページ(オンラインレポートより抜粋編集)から成る電子会議議事録・討議資料小冊子を作成し配布した。今ではちょっとしたネットワーク関連シンポジウムでは恒例になりつつあるが、例のオンライン会議の大会五日前までの内容を見やすく打ち出したもので、これだけでも通常の(電子会議を伴わない)シンポジウム以上の意見交換が行われている。充実した内容であったことが読みとれる。前後には、「電子会議とは」という小文を載せ、ネットワークにいまだ馴染みのない人に、電子掲示板と電子会議の違いなどを説明。終わりには大分大学の宇津宮教授、凍田和美さんがまとめたコアラの会員分布分析やアクセス度数分析などに関する論文を掲載。好評で当日以降もネットワーク非ユーザーの人達からの購入申し込みが続いたし、当日の講演もパネルもそこからの引用が目についた。



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