post112:一方、オンラインでは…

一方、オンラインでは…


 オフラインが活発になればオンラインのことが気になってくる。

 COARAー3はなかなか本稼働に移せなかったが、四月頃から思い余って、OSLが作業をしない夜間だけ希望者にテストアクセスを許すようにし始めた。つまりは、完全にシステムができ上がっていないものの一部分をオンライン開放し、今までにない電子会議機能であるため、先進的ユーザーに使って馴れてもらうこと、さらに、そのインタフェースに関するユーザーとしての意見や感想を集め、より使いやすいようにすることが目的であった。つまりは、制作者側も利用者側もそれぞれに教育し合うことであろうか。

 その意見交換を行うための会議室をCOARAー2内に「COARAー3を目指して」と題して開設した。

 予想通り、そこに寄せられた意見は当初は不評の嵐だった。完全にでき上がっていないので、間違ってシステムの案内メッセージが出されて誤解されたりで二重に不評だった。また、どのような先進ユーザーであっても使い馴れた道具から、理解していない新機能ツールは使いにくく思ってしまう。

 「いっそのこと、このままではいいではないか」、などという人もいるが、やはり前進なくして発展はあり得ないし、真の使いやすさも見つけられない。例会のたびに新システムの説明をしたが、とにかく「現状が変わる」ことに不安、不満をオンラインで表明する人がいて、それにつられて他の人達も心配し始める。

 こういった動揺はこの時だけではなく、COARAー1からCOARAー2になった時もそうだったし、それ以降もシステムの大幅変革のたびに出される意見であって、いわば、人間社会には〝守旧派〟〝改革派〟が必ずいるということを、この革新世界の中でさえ思いしらされる。新しくなることへの抵抗は常に人間の内にあるということだろう。しかし、自由競争社会では、前進し続けるその過程の中にのみ安定があるはず。

 何度も電子会議の意義を説明しつつ、新システムの必要性を説いた。例会にきていた大分大学工学部の宇津宮孝一教授は、私の大学の先輩ということであってか、親身になって気になる点を書き送ってくれた。そういった不安感を解消するために例会では絵入りの説明書を配ってコマンドの説明を行ってみた。

 そうこうするうちに、徐々にテストアクセスで電子会議のおもしろさがわかり始めた先進ユーザー達が私に代わってその必要性や、使い方を説明し出した。これはうれしかった。アスキーの宮崎さんもたびたび東京からアクセスしてくれて、技術的なアドバイスや解説をしてくれたが、とりわけNTTのDDXーTPに関するパケット通信に試用レポートが一番ありがたかった。パケット数を多くしてしまうと通信料金が上がってしまうのだが、新システムではなるべくパケット数を押さえるようなソフト開発が必要だったし、そのことは一般ユーザーには専門的でわかりにくかった事項だ。

 そういった技術的な改善点の指摘が落ちついた頃、ちょうど二周年例会が終わった頃だろうか、COARAー3の新電子会議システムを使って、何をコミュニケーションするか?どうやってコミュニケーション空間を構成するか?といった内容や運営方法に議論が移っていった。

 たとえば、早くからのユーザーである手塚英治君は「ハード(システム)のことより今後のコアラのあり方、方向性の検討をしよう。女性の活躍で全国的に知られたけれど、いつまでもその方法は通用しないだろうし、オフラインもいいが、それは(オフラインに確実に集まれる距離ということから)コアラを一地方のBBSに閉じこめるのではないか?」という主旨の発言を行っているが、まさにこの言葉に代表されるような通信内容の充実化に皆の関心が移ってきた。

 また、アクセスに必要な機器類も徐々にではあるが、明らかにパソコン通信を意識した初心者向けのよいものが発売されてきた。まずは、一九八六年末にエプソンのワードバンクLが春に向けて売り出され、よく売れた。キーにひらがながあって、それを押すだけで確実に日本語がタイプできたし、通信ソフトもコアラホストへのアクセスが事前に登録されていて、パソコンに抵抗あるが通信には興味があるワープロユーザーには比較的低価格でワンセット用意できるので好評だった。当時四歳の長女は、はこれでコアラに初書き込みをしてしまったほどで、その技術進歩にはびっくりしたりしたものだ。さらにヒットしたのは富士通のワープロでOASYS Lite F・ROM9。オアシスワープロの開発者である神田泰典さんがパソコン通信にのめり込んで自らの気持ちを込めて開発した、と、噂されたその製品は六月に発売され、モデムを内蔵し、かつ乾電池だけで動くハンディで低価格(十二万八千円!)なもの。これこそ旅行に必携のものとして大喝采で受け入れられたが、おかしなことに富士通は本品物の広告は一切しない。ネットワーカー達にはネットワークを伝って知れ渡り、おおいに話題になったものだ。こういったワープロ型の通信機器が普及し始めたことも、パソコンユーザーでない人達にパソコン通信を始めるきっかけを与えるものであった。結果的に通信内容がますます技術的なことから離れることになっていく。

 とくにコアラ内はスタジオCOARAコーナーの伝統にのっとった「パソコン通信が社会に与える変化」を議論する根付いた風潮があり、かつ、地域ネットらしく「地域おこし」を論じる〝豊の国づくり〟コーナーも設けられていて、かつ県外からの入会者は各地の先進ユーザーらしく大旨そのような議論を好む傾向も加わって、その方向へ少しづつなびいていく。

 そういったおり、六月十一日、リクルートの社内ネットワークの立ち上げ時に、パソコン通信のおもしろさを話してくれるよう依頼され、出向いて行った。かもめ編集室の福西七重編集長はコアラのおもしろさを聞いて、同じアシストシステムを購入、その日をスイッチ・オンの日とするイベントを企画して私を呼んでくれた。彼女達はネットの愛称を遊び心いっぱいの「愛してる1」 と名づけ、しかも、企業のために役立てようとしている。つまりリクルートでは、パソコン通信が企業利用できると判断したからに違いない。こういった動きが出てくるならば、大分でパソコン通信のメリットを訴え、拡大普及させるための努力をすべきで、何かコトを起こすべきであろう。



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