post106:喜怒哀楽うずまく打ち合わせ

喜怒哀楽うずまく打ち合わせ


 八七年の正月を迎えた。喫茶コアラの発言量も千を越えた。コアラへのアクセス回数はCOARAー2がスタートした頃は一日百回に届かない量だったのであるが、一日二百回近くまで行くほどに盛況になってきた

 新聞もテレビもよくコアラを取り上げてくれた。 ワクワクするほどの注目度だけれど、世の中は不況感の方が強い。大分県最大の企業だった造船会社がついに自己破産を申請。我が社はだいじょうぶだろうか。

 当初、八六年秋には動かす予定だったCOARAー3は、週一回の打ち合わせが重なれば重なるほど、プログラム作業量が増えて納期が遅れていく。三月二十日頃にはメドをつけたいといっているが、これもまた大丈夫だろうか?

 経済同友会やロータリーの新年互例会には出席するものの、それ以外は会社に出ることなく、家に閉じこもってシステムデザインを検討する私におもしろいチャンスがやってきた。アスキーの塚本慶一郎副社長がネットワーキングデザイン研究所を経由して、我々の呼びかけに応じて会ってもよいといってきた。まだ未発表ではあるが、アスキーネットのホストシステムが近々新しくなるが、それがコアラが考えているものと多少似ており「仕様を共通化してもよいかもしれない」という反応である。

 思えばCOARAー2が稼働開始する前の六月一日に、富士通との第一回のCOARAー3打ち合わせが行われ、その時提示したこちらのコンセプト に応じて六月十三日に出てきた富士通仕様は電子掲示板システムであって、電子会議システムからはほど遠いものであった。 そこでCOARAー2の立ち上げが一段落した八月十八日に、こちらからより具体的に仕様を提示したのだが、その仕様は日本ではじめての「発言とレスポンスからなる二次元システム」で、富士通の面々はおおいにめんくらっていた。

 彼らはアシスト(COARAー2)システムを経験して、「未読管理」などの電子掲示板に比べてよりユーザーフレンドリーな考え方に同調をし始めてはいたものの、それをはるかに越える数々の仕様にうまく応えられない。当初は回線数が四回線から八回線に増やすことや、コーナーの数が格段に多く持てるなどの物量アップ機能を前面に出して仕様を提示していたが、「コミュニケーションをする」ことを前提に、利用者のプロフィールや会議への参加度合いを知ること、さらにはコミュニケーションに参加するマナーとして自己紹介を、システム的にやさしく参加者に催促し、人と人の応答を明確に関連づけるためにレスポンス機能を重視する、といった数々の、過去にはない、あくまでも人間の情緒重視のシステム提案に社内でたいへんな議論となったらしい。

 しかし彼らも本気で、一週間後の二十五日、「富士通大分ソフトウェアラボラトリー(OSL)として前向きに取り組みます」という返事を寄こしてきた。これはうれしい。さっそく人員が補強され、福田和智課長の下に、吉田泰明、首藤昌美、広瀬昭文、河野一郎、徳丸和彦、という請負金額からは考えられない異例の大チームが組織された。つまりOSLは、パソコン通信に未来を感じたのであり、先行投資になってもつくってみようという夢に共感してくれたのであろう。そして、本システムづくりは東京側で開発されているパソコン通信のベースシステムである「TELENOTE(テレノート)システム」の上で動くアプリケーションプログラムを開発するということになった。

 一週間に一回の定期打ち合わせは、ケンケンゴーゴーもあれば和気あいあいもある喜怒哀楽の激しいものになってしまった。なぜって夢のある部分は互いに楽しいが、東京側開発部分と私の考えがかけ離れすぎていて、その板挟みに合うとかなり厳しい議論になってしまう。とくに、私の提示する仕様は微妙なところで妥協を許さないところがあって、パソコン通信が一般的でないがゆえに、なぜ妥協しないのか納得できないことが多かったに違いない。たとえば、COARAー2でも問題になった一行二百五十六字以内の制限を取り外す事項は、最後の最後まで(三月頃まで)もめ続けたし、「それを改善しなければ納品を受け付けない」と最後の言葉を出さざるを得ないことが続いた。

 しかし、彼らも頑張ってついてきた。仕様書は改訂に次ぐ改訂で、十月には「第九版」までいってしまったが、「尾野さん、とりあえずここでフックスさせてください。でないとまったくプログラム制作過程に入れません」という悲鳴に私も納得。で、制作に入り十二月八日に微妙な調整を行ってつくられた「第九・二版」はおおまかなプログラム・フローが明確に示され、かつ、コマンド体系も整備されてきた。それらはコマンドだけでも三十個あり、かつパラメータの違いや、使用者権限の違いで動作が異なったりと、日本で開発されたものではまったく見かけられない本格的なものであった。



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